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春の花と表彰台

2月 自由題 -annie-

執筆者の写真: annieannie

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 annieです。今回のテーマは特になく「自由」ということで、中空や大海のただ中に身を放り出した解放感でお送りするコラムになっております。世界が広いぜ、静寂がうるさいぜ。隙間を埋めるために言葉を吐く行為は得意というか、息を吸って吐くとき一緒に言葉も出ていくから飽くことない生命維持活動と大差ないので、みなさま今回は僕の呼吸に付き合ってもらいます。とはいえ語れることなど知れているわけで、つまるところ自分の感覚の切り売りをするしかないわけですが、表舞台に出て表現を通して皆様と交流するほかメンバーと比べあまりにも正体不明すぎるこのannieという男。なのでせっかくの機会、改めて自己紹介でもしようかな。アニーと読むよ。全部小文字表記、まるくてなんだか柔らかくて少しまぬけなのが信条のおじさんさ。


 さて、表現は好きでしょうか。なんだ急にと思うかもしれませんが、これも自己紹介。この問いかけに続ける言葉はもちろん「僕は大好き」

 小さいころから今の今まで自分が面白いと思えるもの、自分の頭の中ぜんぶを吐き出したい衝動が止まらないまま寝て起きてを繰り返してきました。人生で一番の理解者を亡くして誰ともまともに関われなくなったときも命をつないだのは言葉を物語に変換できたからで、そんなこともあり僕の好きは妄執や偏愛に近い気がする。創作表現という行為自体に寄っかかってバランスとっている感じで、そのせいか結果は大して重要視していません。みなさまどうでしょう。自分のバランスを保たせてくれるものはありますか。ある人、お互い幸せ者ですね。ない人、大丈夫。まずはペンを握りましょう。そして思っていることを手元に書いてみましょう。あなたが書く文字は誰にも否定されず、しかし誰の目にも入らず、けれどそれでいい。今日を乗り越えるステップとしてオススメの方法です、なんか文字書くっていうの。

 唐突なライフハックを挟み込み、お節介であるかもしれないことと、果たしてこれも自己紹介足るのかという自問が湧いてきました。よく自問するタイプの人間ですこんにちわ。頭の中にもう一人、自分を観測するための自分がいて、そいつがことあるごとに問いかけてくるタイプの自問マンでもあります。このタイプと、主権者たる自分と自問する自分を反復横跳びする形に二分されるのではないかとかねてより予想している僕ですが、新しいタイプがいたら教えてほしい。常に反語、とか。自問図鑑も別地方に行けば新しいもの貰えるかな。自問モンスター、ユアセルフ/マイセルフ。いや、自問モンスター嫌すぎるね。モンスターに懊悩を持たせるんじゃない、みんな洞窟とか夜の裏道とかに固まってしまう。この辺の話はポ〇モンの知識があるかないかで伝わらない可能性が出てくるコンテキストですが、自由を盾に強行してみよう。自分の頭の中をフィルターかけずに出力するとこうなってしまうという、これもまた自己紹介になります。いや自己主張か。ここまで散らかった自由を野放しにしているのも珍しいかもしれないですが、僕はもっとこんな感じで他人の頭の中も見てみたいですよ。案外みんな理解不能の瀬戸際を歩いているかもしれないと想像するととても愉快じゃないですか。小説読むのが好きな人は何となくわかるかも、というかここまでこれ読んでいる人は分かるでしょう。個人的に今の季節はこんな思考が捗るときだと思うので、同じような人はぜひぶちまけてみて。そして教えて。澄んだ夜空の広さに怯えながら生まれた言葉たちを、こっそり。


 長々駄文を散らしました。疎まれる前にお暇しようかと思います。最後に、冬にオススメの小説を紹介させてください。

 ジャック・ロンドン「火を熾す」

 短編集でいっぱい物語が載ってますが、一押しは表題作「火を熾す」です。厳冬のアラスカ、ユーコン川沿いを歩く男の話で、いのちの熱さと人間の無力感を鮮烈に感じられます。これに影響されて、寒い冬は噛みたばこを噛んで両腕をぶんぶん振り回したくなる。ジャック・ロンドンは全体的に飢餓感というか、歯を食いしばる力が人間にはあるんだよなと感じる話が多いので、噛み応えのある物語を欲している人にはとくにマッチすると思います。食べ物で言うと赤身肉。ぜひお試しあれ。


 それではここまで目を通してくださった奇特な方々、また次回にお会いしましょう。もしくは3月28日からの公演「フレーム いくつかの交流について」で。

bye



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